手術室っていろんな感染対策してるけど、なんのためにしてるのかな?根拠がいまいちわからない…
今日はこんな疑問に答えていきます。
先日、術前のSSIについての記事を書き、あまりのボリュームの大きさに、続けて「術中のSSIリスク因子」まで書ききれず別記事にしました
術前のSSI対策についての記事はこちら
手術部位感染(SSI)は、患者さんにとっても、病院にとっても不利益です
発生すれば、患者さんは合併症が起きやすくなり、体の負担も大きいうえに、入院期間は長引き、医療費もかさむ。病院も入院期間が長引き、治療が増え負担増。大きくいえば国の医療費も負担増です
手術部位感染(SSI)は、医療者の確実な知識と技術で感染対策を行えば、防ぐことができます。術前、術中、術後の各期に渡りリスクがあり、そこにどう対策していくかしっかり押さえていきたいです!!
今日は術中のSSI予防について、一緒に勉強していきましょう!!
1.術中のSSIリスク因子
まずこの表を見てみましょう。この表は
表:手術部位感染のリスク因子
術中のリスク因子には
- 環境による要因
- 手術手技による要因 (医師主導になるので今回は除きます)
- 手術時の微生物感染による要因
があります。それぞれについて説明していきますね!
2.術中のSSIリスク因子:環境
手術を行う環境も、感染予防にとってはとても大切です
外の汚い空気が入ってこないように、ほこりや微生物が術野に落下しないように、手術室内では、空調で気圧・温度・気流が管理されています
ただ、どんなにきれいな部屋の環境を作っても、一番の汚染源はそこにいる、人の皮膚からの落下した微生物です
手術中不必要に、部屋に出入りするのは、ズバリ環境汚染です!
手術室に入るときは、身なりを整え、自分がクリーンな環境を汚染する可能性があることを念頭におき行動することが大切です
術野を見学するときは真上からのぞかない!
落下微生物で感染をおこさせないというのも必要な知識です!
3.術中のSSIリスク因子:手術器材の滅菌状況
外傷などで創が手術前からある状態(開放創)や、微生物が常在する皮膚や粘膜、消化管以外の体内は無菌状態です
手術に使用する器材が確実に滅菌されたものでなければ、手術操作が感染の原因になってしまいます。それを防ぐために、しっかり滅菌状態を確認し器材、医療材料を使用します
滅菌した器材、医療材料は、使用期限を確認し、外装に破損がないか、濡れがないかなど滅菌状態が保障されていることを確認します
術野に使用できるものは「滅菌が保障されたもの」だけです
確実に滅菌されたものを術野で使うのは感染を防ぐのにとても重要!
少しでも汚染された可能性があるものは術野で使いません!
オペナースの看護技術:洗浄・消毒・滅菌の過去記事はこちら
4.術中のSSIリスク因子:手術時の着衣・ドレ―プ
手術室に入る時には、毛髪を整え、帽子をかぶり、口鼻を覆ってマスクを着用します。
手術室に持ち込まれる微生物は、外から入って来る人の「皮膚から落下する微生物」「毛髪から落下する微生物」です
手術室に入室する際の着衣についての過去記事はこちら
滅菌ガウンや術野に使用されるドレープは、不織布という汚れても微生物が繁殖しない素材を使用しています。水にも強い素材ですが、それでも完全に浸水しない素材ではありません
ガウンは著しい血液・体液汚染があるときは交換します
ガウンの中のスクラブまで濡れて、汚染される出来事に遭遇することがあります。そうなると、もうガウンの滅菌性は保証されません
ドレープも、血液などで汚染がひどい時は、さらにきれいなドレープを上からかけて滅菌状態を維持します
「いつまで、どこまで滅菌性が維持されるか」
この知識は本当に大切!
手術はチームで行っています!
医師から声をかけられることもあるけれど、看護師がしっかり気づきたいですね!
5.術中のSSIリスク因子:手術時の創感染
手術時の創感染は、手術創分類をもとに考えていきます
手術創分類は、手術の内容や部位、汚染度によって、清潔度を分類しています。その清潔度によって、創の汚染が拡大しないように対策をしていきます
表:手術創分類
創分類を理解し、ひとつの手術に混在する、清潔に対して不潔が拡大しないように、器械だし看護師は注意が必要です
たとえば、外科では大腸がんの患者さんの手術を行います。腹腔内は清潔ですが、常在菌がいる腸を手術することは不潔操作になります。手術による感染を避けるために、不潔操作で使用した器械は、清潔な部位には使用しません
口から肛門まで消化管でつながっている部分は、不潔とみなされ、器械の扱いも、手術の清浄度も低いという特徴があります
さらに、手術中不潔操作から、清潔操作に戻るときは手袋の交換も忘れず行います。もちろん医師から声がかかることもありますが、手袋交換のタイミングは看護師からしっかり声をかけていきます!
自分が器械だし看護をするときは、患者さんの感染のリスクを最大限引き下げることが求められるし、不潔な器械の取り扱いについても、基本的なルールをしっかり守ることが、SSIを防ぐためにもとても重要です
清潔な器械と不潔操作で使用した器械が混ざらないように管理したり
置き場所を考えたり
不潔操作から清潔操作に戻るときには手袋や器械を交換したり
オペナースが行えるSSI予防がたくさんあります!
医師と協力して、コミュニケーションをとりながら行うことが大切ですね!!
6.術中のSSIリスク因子:手術時間
手術が長時間になると、術野で微生物が感染レベルまで増殖し、それが感染源になることがあります
抗菌薬の予防投与によって、感染がおきないレベルまで抑え込まれた状態も、長時間は続きません。感染がおきないレベルで菌量を維持するには、抗菌薬を3,4時間おきの追加投与する必要があります
さらに術前に手術時手洗いで、手の常在菌を感染が起こらないレベルまで少なくしていますが、時間の経過とともに、菌の量は増えていきます。
滅菌された手袋でも、ピンホールという目に見えないような穴が開いている可能性があることが知られています。また手術に使用する器材には鋭利なものも多く、手術途中で手袋がやぶれる可能性もあります。そのピンホールややぶれから、手の常在菌が術野に移動してしまうということもわかっています
これらの理由で、手袋の定時交換(3時間使用したら交換)や手袋交換時の手指のアルコール消毒を行いましょう!と言われているのです
実際にはまだ手袋の定時交換や、交換時のアルコール消毒まで徹底して行われていない現状があるのでは?
手術の進行の流れが止まるのは執刀医もリズムが狂うので好まないという背景もあります
オペナースはしっかり知識をもって、医者に声をかけ、コミュニケーションでスムーズに、医師の協力を得られるのが理想ですよね!
7.まとめ
この記事のまとめ!
術中のSSI予防、とにかく手術はチームプレー!感染予防もチームプレー!
オペナースが主導して、SSI予防のための行動や、医師への声掛けがとても重要です!
- 感染源を手術室に持ち込むのは「人」、身なりを整え、不必要な出入りは避ける
- 手術には滅菌が保障されたもの「のみ」使用する。疑わしき器材・医療材料は使用不可!
- ガウンもドレープも、血液・体液などの液体が浸水した状態では滅菌が保てない
- 手術には清潔操作と不潔操作が混同するものがあり、器材、医材の取り扱いのルールを守ることが重要!
- 手術時間が長いと感染リスクが高い理由は、感染レベルまで菌が増えるから
とにかく感染が起こらないように最大限対策し、患者さんを守る!
そのためにはとても多くの知識が必要で、日ごろからしっかり意識して行動していく必要があります!
患者さんを守るため、一緒に頑張りましょう!!
ではまた!
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