
手術を受ける患者さんにどんなふうに関わればいいのかな?
オペナース(手術室看護師)が看護するのは手術を受ける患者さんです。
「手術を受ける」という大きなストレスを抱えた患者さんがどんな気持ちで、どんなことを考えて手術にのぞむのか。
手術看護の知識として、手術を受ける患者さんの心理的な特徴を理解し、不安を和らげる看護を行うことがとても大切です。
この記事では、手術看護で絶対押さえておきたい、手術前の患者心理や患者さんの特徴、手術室看護師ができる不安を和らげるための方法と対策を説明します。
この記事を読めば、手術を受ける患者さんの個別性や特徴を考えた看護を提供できるようになります。
手術を控えた患者さんの心理的な特徴は?
手術室では毎日いろんな手術が行われているので、オペナース(手術室看護師)は毎日いろんな手術に関わります。
手術室では長時間の手術や難しい手術、珍しい術式の手術など…ほんとうにいろんな手術が行われています。
そんなたくさんの手術の中には、医療者側からみると「いつもの」「簡単な」という手術があるのも事実です。
でも患者さんは、自分が受ける手術がどんな手術でも
- 何をされるかわからない(イメージがつかない)
- 不安
- 怖い
という気持ちでいます。
患者さんにとって手術は、いつもとは全く違う、想像することも難しいことばかりです。
そして実際に手術を受けると、
- 麻酔がかかった状態
- 苦痛のある状態
- 制限がある状態
など日常生活では経験しない特別な経験をします。
患者さんにとって「大きい手術」「小さい手術」というものはなく、手術にまつわるすべてが「人生の一大イベント」です。
手術を受ける患者さんのほとんどが「うれしい」「楽しい」気持ちではありません。
- これから自分の病気がどうなるのか
- 死への恐怖
- 今までと同じように生活できるのか
- どんな手術をするのか
- 手術後はどうなるのか
- 麻酔が不安
- なにもかも不安
- なにがわからないかもわからない⋯
患者さんはここに例を書ききれないほどの多くの不安を抱え、それと同時に恐怖を強く感じています。
そしてどんな手術でも「悪くなるために」手術を受ける人はいません。
「手術をすれば治る」「病気が良くなる」という期待をして手術を受けます。
患者さんは体調が悪く病院に行き、検査を受けたら突然医者から「手術が必要な病気だ」と言われることも少なくありません。
急に手術が決まる過程の中で、心がついていかない状態の患者さんも多くいます。
そんな時「なぜ自分がこんな病気になったのか…」と自分が病気になったことを受け止められない人もいます。
病気になったことで、今までの自分の人生と向き合う人もいます。
自分で自分のことを決めたいのに、自分で選択できずに家族や周囲の意見に流されてしまう人もいます。
なかには医師から「手術をしても治らない」と言われながらも、万が一の望みに賭けて手術を受ける人もいます。
手術を受けなければいけない状態の患者さんの多くは、突然自分の身に起こった出来事に精神的に不安定になっています。
患者さんの精神状態は平常時とは大きく違い、どんなことでも不安を強く感じます。
治療や療養に関わる説明をうけても、想像がつかずわからないことが多いため、どうするかの決定を医療者側に任せたいという患者さんも多いです。
最近は自分の病気や手術のことをあらかじめインターネットで調べ、正しい知識を持って治療を受ける患者さんも多くなりましたが、それでも医学的には正しくない情報を信じたり、事実とは違う解釈をしている患者さんもいます。
手術を控えた患者さんの心理状態は、入院や手術に対して緊張や不安が強く平常時とは異なることを意識して関わる必要があります。
手術前の不安の原因:患者が最も気にすること
患者さんが手術前に不安を感じる一番の原因は、イメージできないことにあります。
入院するのも手術を受けるのも初めてという人は、入院生活のイメージができません。
手術が必要な病気と言われても、どんな手術をするのか、手術前後の自分の状態もイメージできません。
手術をして病気が良くなるのか、痛みはないのか、痛み以外に苦しいことはないのか全く想像もできないのです。
麻酔から目が醒めないのではないかと不安で気にする患者さんも多いです。
イメージできない、これからどうなるのかわからない。
オペナースとして患者さんに関わるなかで、患者さんが最も不安なのは「イメージできない」「これからどうなるのかわからない」ことだと感じます。
手術前の心理的ストレスを軽減するオペナースの関わり方ポイント
手術前の患者さんは心も体も不安・恐怖・緊張・苦痛が強い状態です。オペナースはそんな患者さんと術前訪問ではじめて顔をあわせます。
術前訪問では、手術までの流れや麻酔や手術についての説明、注意事項などを患者さんに伝えます。
ですが難しい言葉を使って、たくさん説明しても伝わらないことが多いです。
オペナースが担当する患者さんと関わるのは、術前訪問と入室時から患者さんが麻酔で眠るまでの間、術後の麻酔が覚めた後の短時間や術後訪問と限られた時間です。
その中での患者さんとかかわり方のポイントは
- 安心感を与える話し方をする(声のトーンや話し方に注意)
- 安心感を与える関わり方をする(表情やタッチングを意識する)
- 患者さんの知りたいこと・疑問を優先的に解決する
- 看護師として正しい情報を提供する
患者さんの質問や不安はオペナースだけでは解決できないこともあります。そんなときは病棟看護師と情報を共有して継続看護につなげていきます。
医師に説明を依頼したり、病棟看護師に継続したフォローを依頼したり、患者さんをとりまく医療チームの一員としてオペナースも患者の治療や看護に参加することが大切です。
まとめ
手術を受ける患者さんは
- 何をされるかわからない(イメージがつかない)
- 不安
- 怖い
という気持ちでいます。
手術室で働く私たちにとっては「いつもの手術」でも、患者さんにとってははじめてで、イメージもつかないような人生の一大イベントです。
それまでの日常生活から切り離され、手術というたくさんの制限や、苦痛が伴う治療を受ける患者さんの気持ちに寄り添い、以下の点に注意して看護を行います。
- 安心感を与える話し方をする(声のトーンや話し方に注意)
- 安心感を与える関わり方をする(表情やタッチングを意識する)
- 患者さんの知りたいこと・疑問を優先的に解決する
- 看護師として正しい情報を提供する
オペナース(手術室看護師)も患者さんの治療を行う医療チームの一員として看護を提供していきます。
病棟看護師にくらべ、オペナース(手術室看護師)が患者さんと関わる時間は短いです。その中でもできる看護はたくさんあります。
ひとつひとつの関わりを大切にしながら、患者さんを支える看護師になっていきましょう。
この記事が、手術を受ける患者さんの看護に役立つと嬉しいです。